赴任先での生活や文化

日本と海外の医療制度・医療保険は違う!基礎知識や事例を解説

海外赴任生活を送る場合、赴任先でかかる医療費を日本でかかる医療費と同じ感覚で備えていては大変危険です。海外の医療制度が日本と大きく異なるということを知らず、医療保険加入を怠ってしまうと想像を超える医療費を請求されかねません。そんな事態に陥らないために、日本と海外の医療費に関する知識を身につけましょう。

日本と海外の医療制度の違いには注意が必要

かつて日本は、水と医療費はタダと言われていた時代がありました。現在も一部有料化されたとは言え、医療機関へのアクセスはそれほど大変ではありません。一方、海外で良質な医療制度を受けたい場合、日本との医療制度の違いを理解しておかなければ様々なトラブルに巻き込まれる可能性があるため、注意が必要です。

米国の皆保険制度(オバマケア)が導入される前のほぼ実話に基づいた事例です。米国に限らず、海外赴任に帯同される方々は知っておくべき内容が多いこともありご紹介させていただきます。

ニューヨークで勤務するAさんの事例

Aさんは、中小企業の社員として海外赴任勤務となりました。しかし、初の海外進出ということもあり、毎日仕事に追われて慌ただしい日々を過ごしていたのです。そのため自身の健康保険に関しては、現地の民間医療保険に加入することはありませんでした。日本の健康保険に継続して加入していたので大丈夫だろうと安易に考えていたのです。たまに虫垂炎を患うことはあったのですが、日本では症状が出るたびに病院を受診して抗菌薬を内服し、手術を受けるような状態にまで悪化することはありませんでした。

ある週末、Aさんは虫垂炎と同じような症状が発生したことで医療機関を受診しようと思いました。しかし、英語が堪能なAさんでも医療用語は難しく病院を受診することを躊躇してしまい、翌日まで様子をみることにしたのです。翌日の明け方、下腹部の激痛と発熱で目が覚め、これまで経験したことのない痛みのため日本では119番に電話し救急車を呼ぶところですが、救急車を呼ぶ電話番号が分かりませんでした。やっとの思いで通勤途中にある総合病院の救急外来へタクシーに乗りたどり着きました。

救急外来ですぐに医師の診察が受けられると思っていましたが、海外の病院は症状によって優先順位が決定されるため廊下の簡易ベッドで数時間待つことになりました。診察の順番を待っている間、医療保険の有無や医療費の支払い方法など質問されました。そこで、無保険だということが分かると、医療費の支払い能力を証明するか、前金として一定額を支払わない限りこれ以上の医療を提供できないと言われてしまったのです。幸い仕事上のパートナーが電話で交渉し、日本の会社が医療費を負担するということで決着しましたが、虫垂炎から腹膜炎となっており開腹手術を行うこととなったのです。最終的な医療費の合計は1,000万円近い金額が必要となりました。

海外では高額な医療費が必要

高額な医療費

ここでは、日本と海外の医療制度の違いについての解説と、海外の医療制度に関するトラブルを回避するために注意したい点をご紹介していきましょう。 

海外で良質な医療を受ける場合、一般に医療費は日本に比べ高額になります。特に米国では医療保険に加入していない場合、個人で支払うことが不可能な額を請求されることがあります。途上国だったとしても、外国人が医療機関を利用して支払う医療費は日本に比べると高額です。

海外では高齢者や低所得者へ最低限の医療を提供する公的な医療制度はあっても、高度な医療や快適かつ清潔な医療はサービスの一つとして考えられています。それらのサービスを受けるには、相応の費用負担が必要になるため、支払い能力の有無を問われるのです。

また途上国では日本国内と同程度の医療を受けたい場合、近隣の医療先進国へ搬送しなければならない場合もあります。医師や看護師の同乗の有無や医療搬送専用機と民間の航空機のいずれを使用するかなどで費用に違いがありますが、通常数百万円のコストがかかります。そのような費用をカバーするためには、保険の加入が必要となります。しかし、保険内容によって享受できるサービスが異なるため確認が必要です。 

中東の産油国で現地の国籍を有する者は医療費無料というところもありますが、海外では医療はお金がかかるものだと思って間違いはないでしょう。

日本と海外の医療保険制度の違い

日本から海外に赴任する場合、先進国では、現地の民間医療保険に加入することが一般的です。加入した医療保険の契約内容によって、受診できる医療機関や受けられる医療サービスに違いがあります。

米国では医療を受ける場合、通常事前に家庭医と契約しておくことが必要ですが、その際に加入している保険により契約の可否が問われます。 

一方、途上国では海外旅行保険に加入することが多いと思いますが、既往症は担保されないことが多いので注意が必要です。すなわち日本国内で既に高血圧や脂質異常症などの内服治療を受けており、海外で既往症の治療を継続する場合、海外旅行保険ではカバーされないことが一般的です。

日本の健康保険に加入を継続していると海外で支払った医療費を還付する制度もありますが、書類の和訳等手続きが煩雑な上、一旦は自分で全額を支払い、同様の医療を国内で受けた場合に相当する費用が戻るのみのため現実的ではありません。

救急車の違いについて

救急車の違い

日本で救急車を呼ぶ場合は、119をコールし費用は一般的に無料です。米国では911にコールし、費用は有料となります。路上に具合の悪い人がいて親切心から救急車を呼び、その方が利用を拒否した場合、救急車を呼んだ人が費用を負担しなければなりません。日本国内でも救急車をタクシーの代わりに呼ぶようなケースが社会問題になったりしますが、海外では有料が普通です。

また途上国では救急車は最低限の医療機器さえも備え付けられていない場合もあり、搬送先はどこの医療機関となるかも分かりません。そのため救急車が必要な場合は、現地のプライベート病院が所有する専用の救急車を呼ぶか、自家用車で搬送することになります。

病院にフリーアクセスできるのは日本だけ!?

日本では患者が自由に医療機関を選択することが可能です。大学病院や高度な医療を提供する専門病院でも一般的に医療機関からの紹介状があり、医療保険の範囲内であれば自由に医療を受けることが可能です。先進医療を受ける場合は自費治療となりますが、このようなシステムは世界的にはまれで、米国では先の家庭医が医療のゲートキーパーとなり、必要があれば専門医へ紹介します。そのため加入している医療保険により受診できる医療機関や治療内容さえも左右されることになります。

先ほどの事例のように救急受診が必要な場合は、家庭医に電話をするか、保険会社の専用ダイアルに電話をする、救急車を呼ぶなどの対応になりますが、米国では救急外来を受診するほどの病状ではないがすぐにでも医療機関にかかりたい場合は、Urgent Care ClinicWalk-in Clinicと呼ばれるような施設を利用することも可能で近所の施設を事前に調べておくといいでしょう。

途上国では良質な医療を受ける施設は限られるため、外国人が利用する医療機関は民間の医療機関となることがほとんどです。日本では国公立病院などは人材も医療機器も高いクオリティーが確保されています。しかし、海外では公的医療機関は低所得者を対象にし、医療機器も不十分なことも多く、必要最低限の医療を提供する施設であることが一般的です。

海外生活をする上でのドクター選び

ドクター選び

日本国内でも転勤などで見知らぬ土地に住むことになると、どこの医療機関を受診したらいいのか悩むこともあるでしょう。ましては海外ではなおさら主治医選びは大変ですが、一般的には前任者からの紹介や日本人のコミュニティのなかでの口コミ、帯同家族がいればお子さまの学校入学のための健康診断や予防接種が必要性から自然に決まることが多いと思われます。一旦決まった主治医は固定されるものではなく、相性や考え方の違いから主治医を変更することも可能です。また日本でも一般的になってきましたが他の医師に意見を訊くセカンドオピニオンを活用するのも良いでしょう。

日本の医療制度が1番?海外との比較

言葉の壁やこれまで慣れ親しんできた医療制度から日本の医療が1番と思いがちですが、一概にそうとも言えません。日本は皆保険制度のもと医師の技術や経験によらず一定の医療費が医療機関に支払われるため医師間の競争原理が働かず、医療をサービスという視点でとらえることに違和感を持つ医療従事者もいます。かたや米国では高額な医療費が問題となっていますが、移植医療に代表されるような日本国内では一般的ではない先進医療で助かる邦人もいます。

一方、医療ツーリズムで脚光を浴びるタイのバンコクでは、ホテルのような医療施設で日本語による医療サービスを受けることも可能であり、海外旅行保険に加入していれば窓口での支払いはありません。そのため過剰な検査、医療になる問題も指摘されていますが日本以上に快適な環境で無痛分娩を経験した奥様にとって評価は高くなるかもしれません。 

以上のように海外では日本と異なる医療制度である事を理解していないと十分な医療を受けることができません。そればかりか、結果的に多額の医療費が必要となることもあります。健康でトラブルなく赴任期間を過ごせることが何よりですが、事前準備が大切です。 

寄稿

古賀才博先生

海外医療制度の基礎知識について寄稿いただいたのは、医療法人社団TCJ トラベルクリニック新横浜院長である古賀 才博先生。

1992年産業医科大学を卒業後、長崎大学熱帯医学研究所などで研修し松下電器(現パナソニック)の海外医療対策室にて勤務されました。2002年より労働者健康福祉機構 海外勤務健康管理センターで勤務された後、2010年にトラベルクリニック新横浜を開設されました。

こちらは、2023121日発行の「海外赴任ガイド2024年版」を元に作成しています。紹介内容が原文と異なる場合もあります。

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