• 海外赴任時の車の売却はJCM

お気に入り一覧 お気に入り登録 お気に入り解除

阪神大震災を振り返る(3)

 
 
阪神高速道路の 倒壊現場を離れ 神戸局についたのは 
とっくに 深夜を過ぎていたと思う。
 
 
神戸の中心 三宮の繁華街にある神戸局は ネオンが 一切消えた 漆黒の中で
自家発電をたよりに 細々とした 明りを放っていた。
 
 
 
3階建ての 小さな支局だが、
全国から 応援が駆け付け 狭い部屋には 人があふれかえっている。
 
 
私たちが到着すると とにかく 今日はもう遅いので 
3階のスタジオで仮眠をとっておいてくれ、と言う。
 
 
 
地震直後の 神戸の街で 機能している施設は どこもなかった。
 
 
 
ホテルもなければ 自宅にかえるための交通機関もなく 
道路は あちこちで陥没していた。 
神戸局内には 非常用の明りが わずかに ついていたものの 
水道も トイレも使えない。
 
 
仕方がないので ペットボトルの水で 口を軽くすすぎ 
簡易宿泊所となっていた スタジオに入った。
 
 
 
 
 
びっくりした。
 
 
 
 
 
見渡す限り 一面の 人、人、人。
 
 
 
 
記者やディレクター、アナウンサーといった 
直接報道に関係する 職種だけでなく、
中継や 放送を出すための技術スタッフ、営業、総務など
ありとあらゆる関係者が 全国から 駆けつけていた。
 
 
 
ふだんは広く感じるスタジオだが あまりの混雑ぶりに 
一人分の 体を横たえるスペースすら 見つけられない。
 
 
 
床は固く 火の気のないスタジオは 寒くて 当たり前だけど 布団などない。
 
 
 
仕方がないので 壁際のわずかな隙間に 新聞紙を敷いて座り、
着ていたコートをかぶって 仮眠することにした。
 
 
 
これから 何が待ち受けているのだろうか・・・。
次に 家に帰れるのは いつだろうか・・・。
 
 
 
疲れてるのだけど 頭の芯が 冴えて 眠れない。
 
 
 
目を閉じると それまで気が付かなかったが 
スタジオ中で ガシャガシャという音が しているのがわかる。 
天井からぶら下がった 無数の照明が 余震で ぶつかりあっているのだ。
 
 
後でわかったことだが 神戸局の2階は 柱が 完全に折れていて 
天井が 低くなっていた。
ほどなくして 神戸局の建物は 倒壊の危険があるとして 
仮設のスタジオへと 移動することになる。
よく二次災害が 起こらなかったものだ。
 
 
 
しかし 当時は 誰もそんな事を 知る由もない。
 
 
 
 
明日も仕事だから 少しでも眠って 体力を温存しようと思うのだけど
床は固くて 冷たいし 何より 寒い。
 
 
 
すると 近くでうめき声がした。
 
 
 
起き上がって見ると
近くで オジサンが 持ってきた 旅行カバンに 入って 寝ている。 
寒いので カバンの中に入り ジッパーを閉めて 顔だけを 出している状態。
 
 
頭の大きさの割に 体が入っている旅行カバンが すごく小さくて 
なんだか 新種の生き物のようだった。
 
 
そりゃぁ うめき声も出るだろう。
 
 
 
あまりの 斬新なアイデアに 驚いたが そのくらい 寒かったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
奇妙な光景は その翌日も 見られた。
 
 
 
朝になり 先輩が 私に 申し訳なさそうに 切り出した。
 
 
 
 
”スタッフに(中継をするのに10人ぐらいの技術スタッフを連れてきていた)
 朝食を差し入れたいのだけど 連休だったので 現金の 持ち合わせがない。
 
 ( 震災の直前は 成人の日で連休だった。
   また 中継スタッフの食事の手配は ディレクターの役割だった )
 
 悪いけど 暗証番号を教えるので 
 俺の口座から 現金を下ろしてきてほしい。”
 
 
 
いくら会社の後輩とはいえ 暗証番号を教えて
お金を おろしてきてもらうなんて なかなか頼まないと思うが 
先輩は 非常事態だと 思ったのだろう。
 
 
私も 神妙な面持ちで 「 わかりました 」、と 外に出た。
 
 
 
今 考えれば アホみたいな指令である。
 
 
 
局の外に出ると 神戸の街は 壊滅状態。
 
 
 
ビルというビルが倒れ 道を ふさいでいる。
 
 
 
それなのに 神戸っ子のわたしは まず 一番近い銀行のATMをめざし 
走って行った。
 
 
 
もちろん ATMどころか ビルごと倒壊していて 
お金なんぞ おろせる状態じゃない。
 
 
しかし それを見ても私は 「あらら ここはダメか」と思うだけで
「 じゃぁ あっちの方に もう一つ支店があったよな」、と 
走り始めていたのである。
 
 
私も アホだ。
 
 
 
 
 
街全体に 水道も電気もガスもないのに 
キャッシュマシーンを探して 倒れたビルをよけながら 
がれきの街を 走り回っていた オンナ 約一名。
 
 
 
街の風景は 一変していた。
 
 
 
神戸の繁華街は 自分の家の庭のように 知り尽くしている私が 
ある角を 曲がった時
自分がどこにいるのか わからなくなった。
 
 
こんなことが あるだろうか?
三宮で 道に迷うなんて!
 
 
ほとんどのランドマークとなるビルは倒れ 細い路地は瓦礫で埋まり 
地形は 完全に変わって しまっていた。
 
 
 
わたしは その場で しばし 立ち尽くした。
 
 
 
この時だったのかも しれない。
わたしが 本当に 神戸の街に起こった被害の大きさを 
実感することが できたのは。
 
 
 
 
私は 局に帰り 先輩に 「 ATMはなかった 」 と 伝えた。
 
 
 
先輩は 「そうか」と 残念そうだったが 
「 探してくれてありがとう 」と ねぎらってくれた。
 
 
 
スタッフ全員 昨日の早朝から 
ポテトチップス数枚と 半分凍った寿司のにぎりしか 食べていない。
しかし たとえ お金がおろせたところで 
食べ物が 買えた店など なかったのだけど。
 
 
 
その後 結局 わたしたちは 神戸局にいるのは 危ないということで 
ほとんど半日がかりで 大阪まで 戻った。 
あまり寝ていなかったので 車の中では 先輩と 爆睡していたが 
起きても起きても 大渋滞で 一向に進まなかったのを 覚えている。
 
 
 
大阪に戻ってからは 今度は 被災者を取材するために 避難所を訪ねたり 
いろんな方に 被災直後の貴重な お話を うかがった。
 
 
 
そうして やっと 神戸の街に起こった 
恐ろしい 自然災害の全貌が 見えてきた。
 
 
 
 
次回は 神戸で被災した さまざまな方々から うかがった
貴重なお話を みなさまにも お伝えしたいと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
次回も読んでくださる方はクリック・プリーズ
 
↓↓↓↓
 
 
 
 
 

続きを読む

ブログ紹介

ニューヨーク駐在生活ありのまま

http://blogs.yahoo.co.jp/sabenukey

主婦ジャーナリストがホンネで綴るNY郊外の駐在生活。爆笑記事から泣ける記事まで アメリカと日本の「今」が分かります。

このブログの最新記事

これで漏れ無し!海外赴任前の準備方法

チャートとチェックリストを使って、
海外赴任前の準備項目を確認しながら情報を収集して準備に備えましょう!

海外赴任準備チェックリストを確認する

書籍版のご案内

海外赴任ガイド 到着から帰国まで

書籍版「海外赴任ガイド」は各種ノウハウや一目で分かりやすい「海外赴任準備チャート」などをコンパクトな一冊にまとめております。海外赴任への不安解消に繋がる道しるべとしてご活用ください。

書籍版の詳細

プログライターの方

海外赴任ブログを登録する

あなたのブログを登録してみましょう!

プログライターの方

海外赴任ガイドのSNS

Twitter アカウントをみる

たいせつにしますプライバシー 10520045