子は親の鏡

ユウ。
ここ数日、様子がおかしい。

風邪をこじらせて中耳炎になったってのもあるけど、
何かもうひとつ違和感を感じる。

食欲はあるし元気に動いているけど、
どこか私を避けているというか、
ツンケンドンな態度で甘えてこないし、
目を合わせない、笑わない。

三年間毎日ずっと一緒にくっついてた母子だもの、
こんなちょっとした態度の変化にもすぐ気付く。

はてどうしたのか。
ふと、自分の姿を鏡でみてみると・・・

顔色が悪い。
疲れている。
眉間にしわが寄っている。

あぁ、原因がわかった。
私だ。

ユウの表情は、そのまま私の表情なんだ。

ズルズル長引く子どもの看病、しかも同時に二人、
そして更に夫が出張続き＆日曜出勤で不在と、
そんな日々が続くと心も体も疲弊してくる。

アーイーがいなくなったからって散らかし放題にしたくない。
お料理くらい毎日ちゃんと作りたい。
仕事してないんだもん。家事育児くらい一人で完璧にやりたい。
子どものしつけをしっかりしなきゃ。
早く寝かさなきゃ。

・・・と、そんなことで頭がいっぱいになっていて、
一番重要なことを忘れていた。

心の余裕と、愛情。

幼稚園に行きはじめたばかりのユウ。
早寝早起きはもちろん大切。
身辺自立のしつけも大事。

でも、まだ生まれてたったの三年。
ママと離れてまだ一ヶ月。

人一倍ママっ子でビビリだったユウが、
毎日泣かず、指しゃぶりもせずに新しい環境で頑張っている。

それなのに私は、
口うるさくアレコレ注意したり、
時間通りに色々とせかしたり、
食事を細かく管理したり、
怒ったり否定してばかりだったかもしれない。

それでユウの笑顔が消えてしまうなら、
そんなことは後回しでいい。

海外で暮らすユウには、身近に父親と母親しかいない。
その二人ともが毎日厳しく怒っていたら、
一体だれに甘えられるんだろう？

もう少し、「ダメ」を減らしてもいいのかもしれない。
何だか振り返ると、一日中だめだめ言ってた気がする。

それで私自身、怒り疲れていた。

ダメは一日三回までにしよう。
決めた。

ハルを寝かした後、ユウに聞いた。

「ママいつも怒ってる？」

「怒ってる。」

「ママが怒ってるから、ユウも怒ってるの？」

「そうだよ。」

「ごめんね。ユウのこと嫌いじゃないんだよ。ちゃんとした大人になってほしくて、それで怒ってしまったけど、もう怒らないことにしたの」

「怒らない？」

「怒らないよ。だから笑って！」

「えへへ」

数日間仏頂面していたユウが、笑った。

そしてその後は、私が何も言わなくても自分から動き、
いつもイヤイヤ言うお風呂や着替えも自分ですすんでやった。

愛情不足と、自己否定感。
愛情満足と、自己肯定感。

何も注意することなんてなかった。
もともと素直で、聞きわけの良い子。
私はただそれを信じれば良いだけ。

ごめんね。

朝起きたらまず鏡を見よう。
そして、子どもたちに向ける顔を練習。

笑顔。
他はどうだっていい。
ただそれだけ忘れないように。

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