去年の 独立記念日の花火は
私たちにとって 駐在生活 最後のものだった。
１年目は 家の近所の公園で。
２年目は ナイアガラの滝で見た。
そして 最後は マンハッタンで 花火鑑賞と相成った。
ＮＹの夜が更けるのは 遅い。
サマータイムで調整しても尚、午後８時をすぎて やっと暗くなる。
日が傾くとともに 市内に交通規制が敷かれ
人々が 打ち上げ会場の川べりに向かって歩き始めた。
ＮＹ市内の 独立記念日の花火大会は 毎年
東側と西側で 場所を変えて 交互に開かれる。
道路際には 徐々に 見物客が集まり始めた。
地面に座るのは アメリカでは 汚いことでも なんでもない。
むしろ シートを持ってきている人がいたら
そちらの方が 変だと思われるかもしれない。
郊外では 公園などで開催されることが多かったので
みんな ピクニックシートや 椅子にテーブルを持ってきて
まだ 明るいうちから 食べたり飲んだり にぎやかだったが
マンハッタンでは そうも いかないようだ。
開始時間が近づくにつれ 人、人、人。
日本を離れて 久々の人ごみだ。
そんな中 ぽっかりと空いた空間には
優雅に足を組む お嬢さん。
日本なら こんな大きな？子をベビーカーに乗せて
満員電車に乗り込んで来ようものなら 半殺しの目に遭うが、
アメリカでは 誰もが この子に 微笑む余裕がある。
それにしても 暑い。
（もちろん 日本とは比べ物にならないが） 人の熱気で 蒸し暑い。
開始時間は １０分以上すぎた。
いつ はじまるのか・・・・。
すると、いきなり 爆音とともに 花火が打ち上げられた。
ひ、低い。
打ち上げ会場の 割と近くまで来ているはずだが
信号ぐらいの高さしか 上がらない。
川沿いなので 中心部ほど高層ビルはない地域だが
それでも ところどころにある オフィスビルやマンションが
視界を 遮る。
ずいぶん 風情のない 花火大会だな、と思っていたら
目の前で 信じられないことが 起こった。
あろうことか 飲み物の屋台を出していたオッサンが
いきなり 大きな パラソルを開いたのだ。
０．１秒で その場にいた 何百人という人々から
大ブーイングが飛んだ。
「おい 見えないぞ！」
あわてて パラソルを閉じるオヤジ。
そのくらい 開く前に わからないかなぁ～。
明らかに移民である このオジサンにとっては
独立記念日の花火は まったくもって 興味の対象でなく
彼は この日 いかに 飲み物とスナックを売るかに
命を懸けているようだった。
すると 今度は 後ろの方から
ピューピューという 口笛が響いてきた。
誰か スターでもやってきたような ざわめきだ。
一体 誰！？
後篇につづく
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